Only
ふと彼に目をやると、彼の手が微かに震えていた。
今は初夏で、寒さで震えるわけがない。



私は少し迷って、でも半分無意識のうちに彼の左手をキュッと握った。

少し驚いたように彼は私を見て、でも目が合うとすぐに私から目を逸らした。





「駄目だ、明衣。俺のことを知ろうとするな。」



そういった彼の瞳は悲しみの色に染まっているようにみえた。




先に進んではいけないと頭はわかっているのに、体は言うことを聞いてくれない。
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