婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
「……ええ。僕も好きです。もし、手に入るのならば、ミシェルお嬢様以外、すべてを捨てて良いと思うほどには」

「ジュスト……すごく重い」

 ここで私がわざとらしく後退れば、彼はうるっとした目で私に訴えた。

「えっ……あの、怖いだの重いだの、酷くないですか?! 僕がここまで来るのに、どれだけ苦労したと思っているんですか! お嬢様への愛ゆえに、ここまで来たんですよ?」

 数秒黙ったままだった私は、上目遣いで彼に言った。

「……けど、好き」

 その瞬間に、ぱっと立ち上がったジュストは、てきぱきと私に指示を出した。

「はーっ……もう、そろそろ……僕、行きますね……打ち合わせした通りにしてくださいね。ここまで来て、やっぱり止めるはなしですよ。僕が行ったら十秒数えてから来てくださいね。ここで疑われたらいけませんからね……!」

 慌てて去って行くジュストを見て、私はこれまでに、自分がとても大きな勘違いをしていたことに気が付いた。

 ジュストがいつも余裕な態度で飄々としていたのは、もしかして……私が好きだから、バレてしまうから、そうしていただけ……なの?

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