婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
「ええ。たまには、私も夜会で踊りを楽しみたいと思ったのですわ。両陛下が揃って出席されるなんて、とても珍しいですし」

 これも、ジュスト情報。ローレシア王国の両陛下は、先王陛下が早くに身体を壊されて譲位も早かったものだから、とてもお若い。

 国王陛下は当然、自分が開催した夜会にはご出席されるけど、王妃陛下については、何度か出産が続いたり体調を悪くされたこともあって、夜会へご出席されることは少なかった。

 本来ならば、陛下が王太子である時に結婚して彼の継承権のある子ども達複数がある状態にしてから即位しているんだけど、そういった事情で時期が早まってしまったので、色々と不都合が生じてしまっているらしい。

「……まあ、良い。揃って入場出来て、嬉しいよ。美しいミシェル」

「ありがとうございます……あ。そろそろ入場のようですよ」

 爵位の高い順から入場となるために、私は前を向いて用意をしていた。視界の隅に不満そうなラザール様の顔が見えたけれど、それはもう、私にはどうしようもない。

 私が婚約解消したいと思っていることを知りつつ、ラザール様はそれを拒否しているのだから、こちらだって、それを拒否の態度で示す必要があった。


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