婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
 思わず、声が震えてしまった。

 私は単なる未婚の貴族令嬢で、王族なんて社交界デビューの時に、国王陛下より声を掛けられた程度。

 本来ならば年齢の釣り合う王太子や第二王子がデビュタントたちと踊るんだけど、即位が早まってしまったために、私がデビューした年は国王陛下と王弟殿下が、その役目を務められていたのだ。

「しっ……ミシェル様は、黙って傍に居てくださいね……ここが僕が用意した、一番大事なところです」

 直前まで来ているというのに、ジュストは私に何も教えてくれる気はないらしい。

 私たち二人は国王陛下と王妃陛下に正式な礼をして、彼らの許しを待った。

「顔をあげなさい。アシュラム伯爵……サラクラン伯爵令嬢」

 私たちは二人揃って顔をあげ、何故か嬉しそうな表情の王妃様を見てとても不思議になった。

 な、何なの……? 本当に意味がわからない。

 それに、ジュストったら、何をどうしたら、ローレシア王国の至高の存在とも言える王妃様に、ここまで気に入られてしまうの?

< 107 / 200 >

この作品をシェア

pagetop