婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
 これまでにも、ジュストは信じがたいくらいに様々なことをやり遂げていたけれど、こんな風に王妃様に気に入られてしまうなんて何がどうなっているのか、とっても気になる。

「貴方が……私に手紙をくれた、ジュスト・リュシオールね? ……いえ。今ではアシュラム伯爵なのかしら。フィオーラの義理の息子と、聞いているけれど。従属爵位のひとつを貰ったのね。届け出は出ていたわ」

 王妃様はトリアノン女侯爵の名前を言って、もしかしたら義母から紹介して貰ったのかもしれないと思った。それに、早業なジュストは、すでに伯爵位を得ているようだ。

 いえ。私に求婚するならばと手に入れた地位なのだから、今ここで彼が手にしていないとおかしくなってしまうのかしら。

「はい。その通りです。こうしてお目通り叶いまして光栄です。陛下」

「……そして、そのサラクラン伯爵令嬢が、貴方の言っていた女の子ね?」

 ええ。私です。どういう反応を返せば良いかわからずに、私は無言でカーテシーするに留めた。こんな場所に連れて来るのなら、細かく指示して欲しかったわ。

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