婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。

03 置き手紙

「……ジュスト。私、置き手紙には、探さないでくださいって、ちゃんと書いていたはずだけど?」

 何故、手紙に書かれていた通り、そうしてくれなかったのかと、背の高い彼を見上げつつ睨み付ければ、ジュストは悪気なくにこっと明るく微笑んだ。

「それはそれは、申し訳ありません。もしかしたら、僕に探して欲しいっていう、そういう隠喩なのかなと思ったんですけど……」

 表情をわざとらしく変えてすまなそうにしても、騙されない。大体ジュストは、私のことを常に揶揄って遊んでいるんだから。

「そんなこと、ある訳ないでしょ!」

 ムキになって言い返した私に、ジュストは声をあげて笑った。

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