婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
 その隣に居る国王陛下は『仕方ないなぁ』と言わんばかりに、愛する王妃様を優しく見つめているし、ここでぽかんとしているのは私だけだわ。

「王妃様。ありがとうございます……そのお気持ちだけで……本当に感謝しております」

 ジュストは持っていたハンカチで涙を拭い、私はそんな彼を見て開いた口が塞がらなかった。

 嘘泣きよね……? だって、さっきまでジュスト、平然としてなかった?

「アシュラム伯爵。待ちなさい……ねえ。あなた。若い二人を路頭に迷わせるなんて、私には出来ないわ」

「……しかし、私が貴族の結婚問題に口を出すとなると……」

「何を弱気なことを言っているの! あなた!」

 どうやら、我らがローレシア王国の国王陛下、王妃様のおしりに敷かれているみたい。

 私とジュストって、叶わぬ恋で駆け落ちするしかないと思い悩んでいる恋人同士役で大丈夫なのかしら?

 私は感謝に泣き崩れたジュストの隣で、ただ呆然とするしかないんだけど……。

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