婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
 ……私には全然わからないのに。いえ。そもそもジュストがこの先どうするか読めたことなんて、これまでに一度もなかったわ。

「クロッシュ公爵令息ラザール。それでは、話は早いようだ。彼ら二人の事情は、先んじて聞いている。そこで、次は君の意見が聞きたいのだが」

 国王陛下はさっそく、わざわざ呼び出したラザール様へと話を聞く事にしたらしい。

 こんなことになるなんて、ほんの少し前まで知らなかった私は、夜会で共に入場した彼と目を極力合わせないようにした。

 ……もちろん。私だって、言い分はある。

 ラザール様は婚約者の私に対し、結構な酷いことをしたと、誰しも思うだろう。けれど、結局のところは私と結婚しようと思い直したと言えば、許してあげるべきだと思う人が居るとも思う。

 公平な判断を下すというのなら、正式な婚約者であるラザール様に軍配が上がるかもしれない。

 ……ううん。駄目よ。ジュストを信じるって、私はそう決めたでしょう。

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