婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
 ラザール様は何か言おうとしていたようだけど、既に判断を下した陛下には、何も言えないと悟ったらしい。

「はっ……王命に従います」

 してやられたという悔しさへの思いからか、ジュストと私を睨み付け一礼して彼は去って行った。

「ああ……悲劇が起きる前に救うことが出来て、本当に良かったわ……これは知られている話だから聞き及んでいると思うけど、私には昔許されぬ恋に駆け落ちした妹が居たんだけど、あの子は逃げた先で強盗に襲われて亡くなってしまっているの……アシュラム伯爵、彼女をどうか守ってあげてね」

「ありがとうございます。王妃様。何もかも貴女のおかげです」

 泣いている王妃様とジュストを見て、なんだか私も釣られて泣いてしまった。

 王妃様の妹君の話は、社交界デビューする前の話のようで私はあまり詳しく知らないけど……もし、私だって妹オレリーがそんな目に遭ったのなら、駆け落ちするような状況にある恋人同士を見れば、どんな手を使ってでも救おうと思うだろう。

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