婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
「ええ。ミシェル様。誰にも言わずに黙っていられます? 本人にも問い詰めることは出来ずに、表面上はなんでもない振りが出来ます?」

「それは……確かに、出来ないかも」

 隠し子の件を知っていれば、挙動不審にもなるだろうし、機会があれば聞いてしまうはず。ジュストは正確に私の行動を把握していた。

「……でしたら、僕のこのやり方で正解なんですよ。切り札はいざという時に出すから、必殺のカードと呼ばれるんですよ。ミシェルお嬢様」

 にこにこと微笑むジュストを見て、私はやっぱりそんな彼のことが好きなんだと思った。

 婚約者に隠し子なんて、大スキャンダル過ぎる事が発覚して、動揺が凄いけど……単純な私には思いもつかない思考をしてしまうところも、誰が何を言おうとすごく好きだから。




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