婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
「僕の父は難病を研究しては、数々の特効薬を開発しておりまして……あの人は研究馬鹿で、ただそれだけで満足していたんですが、僕が義母と共に苦心して量産することに成功し、販路を拡げまして、ええ。平たく言いますと、お嬢様。僕は現在お金だけは、潤沢に持っております」

 確かにジュストのお父様が叙爵された時の新聞記事にも、数々の難病を克服しと書かれていたから、彼が開発してくれたのはオレリーがかかっていた先天性の病の特効薬だけではなかったらしい。

 それに……本来ならば治療することも難しい難病であれば、特効薬と聞けばお金に糸目をつけずに買い求める人だって多いはずだ。

 だから、その特効薬のすべての権利を持つ人の息子だって、大金持ちになってしまうことは想像にかたくない。

「すごいわ……ジュスト。貴方って、もう……本当に、信じられない」

 彼が今夜までに、どれだけの下準備をしていたのかと思うと、何も知らないままただ守られていた私は溜め息をついた。

 ……お母様が言っていた『あの彼の愛はとても深くて重そう』といっていた評価が、ここで正しかったことが証明されてしまった。

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