婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
 浴室の話をするということは、私も今夜はそこに入ることが前提なのよね?

「今夜は、僕たちはここで過ごそうかと……お嫌ですか? お嬢様」

 ここでそういう子犬のようなうるうるした目は反則だわと言いかけて、これまでに私がジュストをどれだけ我慢させていたかと思い返した。

 この私だって貴族令嬢で閨教育などは一般的に受けているし、男性の生理的な現象にも理解はあるつもりだ。

 ジュストのこれまでの苦労、これまで我慢したもの、そして、私をどれだけ愛してくれているかを知れば、ここで彼を拒否することは出来ないと思った。

 それに、貴族令嬢は初夜まで純潔を保つことを義務とされていても、私はジュストと結婚するのだから……そういう関係になってしまっても、何の問題もないと思う。

 ジュストの思惑は読めないしわからないけど、彼が私を愛していることだけは疑いようもないのだから。



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