婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
「あー……あの話ですね。ですが、結局は婚約者はミシェルお嬢様のままです。先方のご両親だって、健康な体を持つミシェルお嬢様が良いと仰ったと言ったでしょう。それに、貴族の政略結婚に、愛なんか必要あります?」

 政略結婚した貴族なんて、家を繋ぐための長子とスペアとなる次男を産んで終われば、お互いに大事な役目はやり遂げたとばかりに、その後はお互いに愛人を作ったりすることも多い。

 だから、ジュストだって、私に割り切ってそうすべきだと言っているのだ。

「愛は要るわよ! ……少なくとも、私は」

 私の両親は恋愛結婚で、夜会の中で跪き、母に愛を乞うた父の話は有名だ。

 そんなロマンチックな恋物語主人公二人の娘としては、出来れば愛し合った人と結婚したい。決められた婚約者だとしても、愛を育みたいと願ってしまうのだって自然なことのはずだ。

「では、ラザール様に、直接そう言えば良いでしょう」

「ラザール様は、オレリーのことが好きだもの。私のことなんて、好きではないわ」

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