婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
 けれど、今目の前に居るこの人は、全然違う。

 臆病で愛されていることを信じられず、それでもと勇気を振り絞り私へと手を差し出した。

「っ……はあっ……はあっ……何言ってるの。私が貴方のこと、嫌いな訳ないでしょう。ジュストが私をこんなに好きにさせたのに、僕は自信がないなんて、もう言わせないわ」

 私に押し倒されたジュストは幼い頃から、私のことを最優先にしてくれていた。

 転んだらすぐに助け起こして慰めてくれたし、私が興味あると知れば、すぐに博士くらい知識を仕入れて冗談混じりに披露してくれた。

 可能な限り傍に居てくれたし、嫌なことを言われても、口の上手い彼がすぐに相手をやり込めてくれるので、私はいつ何処へ行くにも不安などはなかった。

 そんな彼のことを、私が好きにならない訳もなく……すべての障害が取り除かれたのならば、ジュストと結ばれたいと望むことだって、何の不思議もないと思う。

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