婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
 品の良い貴族服を着たジュストは、まるで生粋の貴族のようだった。平民とはいえお父様は学者で生活水準が元々高かったし、私の傍に居るのならと、礼儀作法もみっちり扱かれている。

 貴族令嬢である私の隣に並んでいても、誰も不思議には見えないだろう。

「……そうだったの?」

 ジュストが私の護衛騎士になったのは、ずっと傍に居ることになる彼が遊び相手にもなれるように、私と年齢が近いからだとは前々から聞いていた。

 幼い頃に母親を亡くしたジュストは生活不能者であったお父様から離して育てられたというのも、私はこの前知ったばかりなのだ。

 別に彼に興味がなかったという訳ではないけれど、なぜかジュストは自分のことになると違う話題を出して誤魔化してしまったり、私を揶揄って終わっていた。

「ええ。サラクラン伯爵は、もしかしたら、それを後悔なさるかもしれないですけど……僕はミシェルに会えて、人生が変わりました。ただなんとなく過ぎていくだけの無為な時間を、目的へと進むことの出来るとても意味のある楽しい時間に変えてくれたんです」

「ジュストって、私のことが好きすぎて……たまに、怖くなるわ……」

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