婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
 私とラザール様が婚約するきっかけとなったお祖母様の友情も、問題はなさそうだ。ほっと安堵する。お祖母様は大好きで、彼女に嫌な思いをさせたい訳でもなかった。

 続いてお父様はジュストを見て、彼に話しかけた。

「ジュスト。お前は本当に、抜け目のない奴だな」

「お褒めいただき、ありがとうございます。サラクラン伯爵。こちらで適切な教育を施していただいたおかげです」

 はあっと大きくため息をついたお父様は、困った表情をしていた。

「しかし……いや、これについては、先んじて言っておく。私は信じてはいない。だが、あの子がそう言うからには、ジュストとミシェルを結婚させる訳にはいかない」

「……え?」

 お父様が困り顔をしていた。ここで言う『あの子』は、妹オレリーのことだろう。どうして、あの子の話が?

「オレリーを呼びなさい」

 壁際に控えていたメイドにそう言ってお父様は、暗い表情で私たちの顔を見ていた。

 ……どういうこと? オレリーが何を言えば、私たちが結婚出来ないことになるの?

「……お呼びですか? あら。お姉様に、ジュスト……お帰りなさい」

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