婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。

20 所有欲

 お父様は『ここは、二人で話をしなさい』と言って席を立った。

 お父様にもオレリーが嘘を言っているとわかってはいるけれど、あの子がそう主張している限り、どうにもならないと考えているのだろう。

 だって、私の護衛騎士として、ジュストは確かにサラクラン伯爵邸に常に居たんだから、オレリー自身がそう言うのなら、いくらでも機会はあっただろうと思われるし、二人はそういう仲なのかもしれないと思われてしまう。

 ああ。オレリーがあんなことを言い出すなんて、本当に思いもしなかった。

 ……けれど、思い返してみれば、オレリーは幼い頃から姉の私の持っているものを良く欲しがった。

 あれを言い出してはみたけれど、あの子はジュストのことを好きで結婚したいという訳ではないと思う……ただ、姉の私が持っているから欲しいと思っているだけで。

 結婚したいと言い出した私に、ジュストは性格が悪いと言いに来たくらいだから、それなりに彼のことだって知っているはずだし……。

「すぐに、医者を呼びましょう。ミシェル」

「え? 医者を……? けれど、何のために?」

 無言で考え込んでいたジュストはそう言い、私はそれは何故なのかと驚いた。

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