婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
「……ああ。思い出しました。そういえば、お仕えするようになってすぐに、オレリー様が僕が欲しいと言い出して、絶対に嫌ですと彼女を拒否したことがありましたね」

 ジュストは妹オレリーから、自分が嫌われるきっかけになった過去を思い出したようだ。彼にとってはどうでも良い事でも私にとっては重要なことなので、ずっと覚えていた。

 その時にもジュストらしいはっきりとした意思表示をする彼の姿を思い返して、つい、微笑んでしまった。

 サラクラン伯爵邸すべての人間で甘やかしてしまい、我が侭放題になってしまっていた妹の言い分を、彼は淡々とすべておかしいと言い返し、私の護衛騎士が良いから無理ですと呆然としていたあの子に言い放ったのだ。

「嬉しかった。私はジュストもオレリーに、取られてしまうと思ったの。けれど、貴方ってすごく主張が強かったでしょう? だから、ジュストは取られないんだ。ずっと……私の傍に居てくれるんだと思って、本当に嬉しかったの」

「……はあ。まあ、そうですね。僕は物言わぬ、ぬいぐるみではありませんから」

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