婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
「……私がラザール様と結婚してサラクラン伯爵邸を出れば、昔、手に入れ損ねたジュストが、あの子はようやく手に入ると思っていたのではないかしら」

「……は? 僕ですか?」

 ジュストはぽかんとした表情をしていた。彼だって自分がぬいぐるみのように姉妹に取られ合うなんて、思ってもみなかったはずだ。

 けれど、オレリーがあんな嘘をついたのは、きっとこれが理由なのだ。

「そうよ。私がクロッシュ公爵家に入れば、ジュストは置いていくしかない。昔から私の持っていたもので、あの子が手に入らなかったのは護衛騎士だったジュストだけ。だから、あの子はずっと欲しかったのよ。それは、何年経っても変わらなかったんだわ。成長しても、ずっと貴方が欲しかったのね」

 オレリーは私はラザール様と結婚すべきだし、ジュストは貴族になったとしても似合わないとずっと反対していた。そうだ。あの子はこんなことになるなんて、思ってもいなかったはずだ。

 自分が欲しがったジュストを手に入れるまで、もう少しだったのに。

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