婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
 今まで一度も口にしたことがないのに、何を勘違いしているのかしら。私が睨むと、彼は嬉しそうに言った。

「ええ。言えない気持ちほど、高まるものです。それこそ、『禁じられた恋』は激しく燃えるでしょうね……もし、僕のことが好きでないならば、何故、僕の故郷へ家出して来たんですか?」

「……それは! ジュストがこの村がすごく住みやすいって言ってたし、私の好きそうな風景だと」

「そうですね。あ。良かったら、実家見に行きます? すぐそこなんです。実家」

 ジュストが曲がり角の右を指さしたので、私の心は揺れ動いた。

 ……ジュストのご両親、ジュストが住んでいた家……見てみたい。迷った私を見透かすように、彼は背中を優しく押したので、私は歩き出した。

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