婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
いつもならば甘い姉の私が引くと思ったところで引かず、予想外だったのか、オレリーは立ち上がって叫んだ。
「……医者を呼ぶ必要などありません。私は嘘など、ついていません! ミシェルお姉さま。お姉さまはわかってくださるはずです。ジュストは口の上手い悪い男です。私たち姉妹を騙していいようにするなど、あの人にはとても簡単で……」
「もう一度聞くけど、ラザール様はどうして要らなかったの? オレリー。あの方は公爵家ご子息で、いくつかのことを見なかったことにすれば、誰しもに自慢出来る夫になるはずの人よ。未来の公爵ラザール様よりも、護衛騎士だったジュストが欲しかった理由は、一体何なの?」
彼女の言い分を無視してそう言い切った私に、オレリーは眉を寄せて面白くない顔になった……幼い頃、この子がこういう顔をするたびに、私は無言で欲しがるものを与えていた。
今はただ、見せかけだけの『成長した振り』を見せるのが上手になっただけで、オレリーの中身は幼い頃から変わっていない。
私たち二人は見つめ合い、部屋には長い沈黙が流れた。