婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
 けれど……この子に我慢を覚えさせなかったのは、まぎれもなくオレリー以外の私たち家族の罪。

「貴女の言う通りに……私がこれまでに好きになったのは、あのジュストだけよ。お母様も知っていると言っていた。オレリーにもわかっていたのね」

 私が一番に欲しくて、けれど、幼い頃からの婚約者と結婚すれば、手放さなければいけなかったジュスト。自覚すると辛くなるからそうしようと思わなかっただけで、私は彼のことがずっと好きだった。

 だから、それを知ったオレリーはジュストを敢えて欲しがった。

「あれで……わからないと思う方が、おかしいと思います。ミシェルお姉さま。お姉さまの視線は、いつもジュストを追っていたもの。身分を持たぬ、護衛騎士なのに。本来であれば絶対に……叶わない恋であったはずなのに」

 オレリーは悔しそうにそう言い、私を睨み付けた。こんな風に感情を露わにするオレリーを見たのは、なんだか久しぶりだ。

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