婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
 陛下からの叙爵の話だって、自分にはどうでも良いと話していたというのに。

 ただ、息子の頼みを聞いてオレリーの掛かっていた先天性の病が良くなるような特効薬を、彼は作ってくれただけなのだ。

「それは……」

 オレリーもジュストが自分の病を治すために動いてくれていたなんて、これまでに思っても居なかったようだ。

 たとえ、姉の私を愛しているからという理由からだとしても、少し動けば呼吸が苦しくなり、ほぼ動けないオレリーの身体を楽にしてくれた恩人だ。

 私だって、とても感謝している。

「前々から貴女の言っていた通り、健康な身体を持っている私には、オレリーがこれまでにどれだけ苦しかったかなんてわからない。けれど、恩人のジュストにこんなことをしてしまって良いの? 私とジュストの結婚を邪魔して、それで満足なの?」

 私の問い掛けにオレリーは呆然としていた。本来ならば、優しい子なのだ。身体さえ病魔が巣くわなければ、こんなことなんて、絶対にしないと言い切れるくらいに。

「ミシェルお姉さま……」

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