婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
「ええ。ジュストとのことは、嘘だと認めたわ。それに、特効薬を飲んで健康になったあの子には、私はもう甘やかさないと伝えたの。お父様もそうして……それが、家族としてあの子のことを愛するということだと思うわ」

 私たちは命の期限のあるオレリーを、揃ってとても甘やかした。けれど、健康になり普通に生きていくのなら、そういう訳にはいかない。

 私たちは、ずっと傍には居てあげられないのだ。

「わかっている。お前には、本当に苦労をかけた。今回のことについてもだ。ジュストとの結婚を許そう」

 私はその言葉を聞いて、隣に居たジュストと目を合わせた。

 ……これで、私たちの間にある障害はすべて取り除かれた。

「サラクラン伯爵……感謝します。幼かった僕をサラクラン伯爵邸に置いてくれたことも、ミシェルと出会えたことも、すべて感謝しています」

「……お父様。本当にありがとうございます」

 私たち二人から感謝の言葉を聞いて、お父様はどこか照れくさそうだった。お父様だって幼い頃から我が家に居たジュストは、成長を間近で見ていたし可愛かったに違いない。

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