婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。

24 お茶会

 城の庭園で開かれたお茶会に主催者たる国王陛下と王妃様がいらっしゃったのはたった一時間だけで、お二人は多忙を理由に残念そうな表情で去って行った。

 けれど、これは事前に決められた流れで予定通りだと思う。

 国王陛下もロマンチストの王妃様に押されて、本来ならばこういった貴族の結婚問題などに口出しすることのないご自身が婚約解消を言い渡した手前、臣下たる私たちが険悪な仲になるようなことは止めて欲しいと示す必要性があった。

 そして、王族がその場に居て彼らとは関係ないクロッシュ公爵家と我がサラクラン伯爵家、そして、ジュストが義母から頂いたアシュラム伯爵家の話をする訳にもいかない。

 天気良く光あふれる庭園に残されたのは、ラザール様とジュストと私の三人。

 ほんの上辺の表面上は、穏やかな時が過ぎていた。

 私がお茶会が始まった時から、とても気になっているのが、ラザール様がとても機嫌が良さそうなことだ。

 公爵家の跡取りとして生まれた彼は、あまり感情を隠すことが得意ではない。

 ラザール様は未来の公爵になるべく厳格に育てられ、とてもプライドの高いお方。だと言うのに、下位の身分にある私から婚約解消を言い出したことも、彼には気に入らなかったはず。

 そして、まるで森の中にあった罠に嵌められた獣のようにして、あの場で国王陛下から婚約解消を言い渡された。

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