婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
 ラザール様はあの時もその後も、とても気分が悪かったはずだ。ジュストにしてやられたと悔しく思ったはず……それは、長年過ごして来た私には手に取るようにして想像出来てしまうのだ。

 陛下たちが席を立たれて、婚約していた私に対し、隠し子のことについての謝罪があった。

 あれは隠していた自分に非があるし、そろそろ私にも報告しようと思っていた矢先、あのような形で伝えることになり不本意だったし、嫌な思いをさせてしまい申し訳なかったと。

 あの時点で私は実際にそれを知らなかったし、その直前にした家出の原因としてそれを出してしまっていたから、彼の謝罪を受け入れ曖昧に笑うしかなかった。

 隣に座っているジュストは、開始からずっと澄ました表情で、にこにこと微笑んでいた。至高の存在たる王族が同席していても、全く怯まないところは、本当に彼らしいと思った。

 私にとって、頼れる人なのだと。

 そして開始からそれなりの時間が経ち、お洒落な荷台に運ばれて二杯目のお茶が用意された。

 甘くて芳醇な良い香りが漂った。

 私の記憶にないもので、異国の高級なものなのかもしれない。

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