婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
 呆れたように言ったドレイク様に、ジュストは鼻で笑って言い返した。

「父さんだよ。父さんに決まっている。父さんだって、研究のためには、寝食忘れて手段を選ばないだろう? 僕はそれが、ミシェルを愛することだったってだけだ。ラザール・クロッシュが自分の仕掛けた罠踏んで居なくなれば、もう変なことも頼むこともなくなるよ」

 ジュストはドレイク様の差し出した緑の小瓶をもらい、少しだけ口に含んで嫌な顔をした。

「不味いね」

「そりゃまあ、美味しく作ってない薬だからね。けど、どうするつもりだい? 毒を飲んだ振りをして、倒れたが、それは病気だったことにするって聞いたけど?」

 病気だったことにするって、どういうことなの?

「うん。僕が軽い肺炎であれば、こうして血を吐いてもおかしくないだろう? 治療中で飲んでいる薬だから、こうして減らしておかないとおかしいからね。今頃、あの場に居たラザールが意気揚々と、陛下なんかに何があったか事情説明している頃だろうからね。ははは。あいつの用意した毒なんて、もう何処にもないのにさ」

「え……? どういうこと?」

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