婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
 私はぽかんとしていた。ジュストが私に黙って色々計画して実行する人って知っているけどでも……毒を飲んだ振りをして病気だったことにするって、本当に意味がわからないわ。

「ああ。ミシェルお嬢様。僕は少し前から患っていた肺炎で喉を傷つけ血を吐き、この薬を飲んで治療中なんですけど……」

 じっと目を見つめられ真剣に言われて、そうだったのかもと思ってから、そんなはずないと思い直す。

「えっと……そういうことに、しろってこと……?」

「勘の良いミシェルは、大好きです。そうなんです。けれど、僕たちの飲んでいたお茶や茶器からは毒が出てきていないのに、おそらく毒が入っていたことになっているんですね。とても不思議ですけどね」

「……え?」

 毒が無いけど、毒があったことになっている……?

「そうそう。つまり、あのお茶会で、僕かミシェルが死なない程度の毒を飲み、王家がせっかく僕らのためにと主催してくれたお茶会を、話題になりたい目立ちたがり屋だから台無しにしてしまうことになるんですけど……というか、それがラザールが作った筋書きだったんですけど」

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