婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
 国王陛下は流石というべきか毒でもなく、単に体調不良で倒れてしまったのならと寛大な態度を見せてくれた。

「優しいお言葉をありがとうございます……陛下。僕の自己管理の乱れが原因で、お二人にご心配をおかけして、本当に申し訳ありません」

 ジュストはすごく反省していて、薬を飲み忘れた自分が、この場で一番悪いという表情をしていた……もちろん、そんな訳はないことは私は知っているけれど。

「ちょっと! クロッシュ公爵令息。貴方の話は嘘ばかりだったようね? 不運にも体調不良だったアシュラム伯爵を、彼の不在な時に陥れるようなことを言い出すなんて……軽蔑するわ!」

 興奮してしまった王妃様はその場から立ち上がり、怒りの余りか、挨拶もせずにそのまま去っていってしまった。

 ロマンチストだし、激情家な人なのだと思う。私たちも彼女に助けられたけれど、今は顔を真っ青にして無言のラザールを見て、気分が晴れる思いだった。

「……まあ、とは言え……勘違いは、良くあることだ。だが、ラザールはこの二人に対し、非礼を詫びるべきだと思う。私は、覚えておくよ」

< 191 / 200 >

この作品をシェア

pagetop