婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
「護衛騎士で居た間、僕は傍近くに仕えていても、貴女が別の男と踊っていても、ずっとそれを見ているだけでした。一緒に踊りたくて……それが今夜、叶って嬉しいです。ミシェル」

「ジュスト……」

 一瞬、これはまた後で揶揄われる? と、身構えてしまった。だって、ジュストっていつも私のことを怒らせたがるもの。

 けど、ジュストはこの時、本気でそう思っていたらしく、私の手を取り真面目な顔をしてキスをした。

 十年間始終一緒に居たはず人なのに、不覚にも胸がキュンと高鳴って、彼にした幼い頃の初恋のように、ときめいてしまった。

私たちはじっと見つめ合い、ジュストがにっこり微笑んで言った。

「そういえば、僕……ミシェルに言わなきゃいけないことがあったんですよ。すっかり、忘れてたな……怒らないで聞いて貰えます?」

 ジュストは優秀な護衛騎士で仕事は出来たんだけど、常に一人で何役もこなさねばならず、たまに私の習い事の予定なんかを言い忘れることがあった。

 とは言え、それは些細なことだし、先生たちも少し待たされたからと怒らない方たちだったので、特に問題は無かった。

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