婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
 重要なことは先んじて言ってくれるので、私も言われ忘れたからと、彼を怒ったことなんてこれまでに一度も無かった。

 これは少し焦った様子だから、何か買わなきゃいけないけど、まだ注文していなかったというところかしら?

「ふふ。良いわよ。また、言い忘れていたの? 怒らないわよ。今度は何?」

 いつものように『怒らないから、何があったか言ってみて』と、私が促すとジュストはすまなそうな表情で言った。

「実はラザールとオレリー様を、敢えて会う機会を作ったのは、僕なんですけど……ミシェルは、許してくださいますよね? きっと」

「……え?」

 微笑んでいた私は、思わず動きが固まってしまった。

 今、なんて言ったの?

「ええ。言わないとと思って居たんですけど、ずっと言い忘れていたんです。すみません。ラザールの好みだったみたいなんですよね。オレリー様。ああいうすぐに消えそうなくらい儚い外見の人が好きなようで……あの後も、まんまと僕の思う通りの展開になってしまって……なんだか、怖いくらいでした」

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