婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
 二歳年下の妹オレリーは幼い頃から病弱で、三歳の時には無情にもこれでは成人は出来ないだろうと医師に告げられた。

 両親はそれを聞き嘆き悲しみ、姉の私だって胸が引き裂かれるくらい悲しかった。だって、あの子はまるで天使のようで、とても清らかな存在だと思っていたし、私にとってはたった一人しか居ない妹だった。

 オレリーの体調が両親の最優先になることだって、あの子の姉として、仕方ないと考えていたし寂しいと思う気持ちは押し殺して何も言わずに我慢した。

 ……だって、可哀想なオレリーは、大人になれずに亡くなると宣告されている。だから、生きている間、あの子が常に幸せであるように願っていた。

 姉の私は幸い健康な身体を持ち、少々風邪をひいたとしても、あの子のように重篤な肺炎を併発してしまうこともない。

 けど、妹オレリーは違う。大事に大事に育てなければ、すぐに死の危険迫る危篤になってしまう。

 私はローレシア王国の貴族に良く居るような金色の髪と緑の瞳だけど、あの子はまるで神に選ばれたかのような、珍しい銀色の髪に紫の目を持っていた。

 オレリーは、特別な女の子だった。姉の私とは違って。

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