婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
「近いです。何か問題でも、ありましたか?」

「こっ……この馬車の中でも、あれをするの?」

 さっきの、ジュストの実家でした甘い空気の中の行為を、またここでするの?

 私がそう聞けば、ジュストは身体を離して吹き出して、お腹を抱えて笑い出した。笑いの隙間に何か言い出そうともしているんだけど、笑い過ぎてしまって言葉にならないようだ。

 な、なんなの! 疑問に感じたことをそのまま聞いて何が悪いの?

 ジュストが私のことを揶揄うのは、いつものことだけど、笑い過ぎよ! しっ……失礼なんだから……!!

「……すっ……すみません。ミシェルお嬢様。あまりにもお嬢様が可愛過ぎて、どうしても我慢が出来ませんでした」

 我慢するところがなんだかおかしい気もするけれど、良い性格をしたジュストにとってはいつものことだから、怒ることでもないのかもしれない。

「私のことを笑うことを?」

 ムッとしてじろっと彼を睨め付けた私に、ジュストは苦笑して頷いた。

「いえ。こんな僕にも、とても可愛いところがありましてね。どうか、聞いてもらって良いですか?」

「それは、別に良いけど……」

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