婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
「……言ったでしょう。お嬢様が僕のことを好きだったから、気に入らなかっただけですよ。そして、僕を敢えて名指しで排斥することになれば、お嬢様の恋心を自覚させ、自分の負けを認めるようで嫌だったんでしょう。彼にもずっと不満があったんですよ」

「そうなの……?」

 ラザール様は未来の公爵となる令息らしく、幼い頃から、とてもプライドが高いお方だ。

 身分も持たぬ護衛騎士ジュストの方が、婚約者の私の関心を惹いていると思えば……そんな彼は、どう判断するだろうか。

「ええ。そうです。ですから、僕は先ほども言っていたではないですか。ミシェルお嬢様は僕のことをお好きなので、それをあの方は、ずっと気に入らなかったのではないかと」

 確かにジュストはそう言ったけれど、私にはそれが理解出来なかった。

 だって、私がいくらジュストが好きであっても、状況的にラザール様と結婚するしかなかったし、彼だってそれは知っていただろう。

「確かにジュストの言う通り、ラザール様のお気持ちは、聞いてみなければわからないわ。けれど、オレリーに恋をして、私から婚約者を交代させろと言ったことは、変わらない事実でしょう?」
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