婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
私の家出の原因は、結局そこなのだ。
強く詰め寄る私には別に逆らう気はないと示すためか、彼は両手を挙げた。
「僕はラザール様を庇う訳ではありませんが、男は目新しく珍しいものへ、たまに目移りする事もあるんですよ。そして、慣れていて期待通りのものへと帰ってくるものなんです。良くある話なんですよ」
「え。そうなの?」
そんなことが? 世の中には良くある話なの? 嘘でしょう。
「ええ。世の浮気の理由はほとんどこれでしょう。もし、本気の想いならば、保険など掛けず別れてから言って来るはずです。そうではありませんか?」
男性のそういう浮気をしてしまう理屈を聞いても、私には不快感が増すだけだ。
その理屈で言うのなら、本当に私のことが好きなら、浮気なんてしないのではないの?
「……最低。私なら、絶対に! そんなことは有り得ないわ」
「ええ。ミシェルお嬢様は、昔から僕に一途でしたからね」
心から理解していると言わんばかりにジュストは頷き、私はいつものごとく半目になった。
「ジュスト……その良くわからない自信は、どこから湧いて来るの?」