婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
 今思うと私は昔からジュストのことを好きだったと思うし、彼がそば近くに居てくれることに喜びを感じていたと思う。

 けれど、私は貴族令嬢の義務として、幼い頃からの婚約を果たすことを求められていて、恋心を自覚してしまうことも、彼にそれを告げることも許されなかった。

 そういった理由で私はこれまで、ジュストに好きと言った事もないし、そんな素振りも一切見せていなかったはず。

「だから、言ったではないですか。ただその目を見れば、わかります。ミシェルお嬢様は僕のことを、誰よりも好きなんですよ」

「何を言っているの? 本当に、自意識過剰よ。ジュスト」

 呆れた私がそう言えば、ジュストは肩を竦めた。

「え。では、僕と結婚するはずのミシェルお嬢様は、僕を好きではないということになりますけど……そうなんですか?」

 少々悲しそうな表情を浮かべたジュストに、言い過ぎたかもしれないと私は慌てて首を横に振った。

「べっ……別に、そんなことは言ってないでしょう」

「いい加減に素直になった方が、良くないですか。お嬢様は、僕のことがお好きなんですから」

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