婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
 眉を顰めたお父様は、私にとても良く似ている。金髪に緑色の目、そして、美しく整ったと例えるよりも、可愛らしく愛嬌のある顔立ち。

 見慣れた父の顔が険しく歪んでいるのを見て、私は悲しくなった。父は私の言いたいことだって既に承知しているはずなのに。

「だって……ラザール様は、あの子を望んだんでしょう。でしたら、それでもう良いはずです!」

 ラザール様は自分の望んだ女の子オレリーと婚約出来るのだから、何の問題もないはず。

 お父様は私がまさかそれを知っているとは思わなかったのか、とても驚いている表情になっていた。

「おい。どこで、それを知ったんだ? まさか、ジュストから聞いたのではないだろうな……?」

 さっき涼しい顔をして部屋を出て行った護衛騎士ジュストを疑っているお父様に、私はすぐにそれを否定した。

「まさか! ジュストはそのような事は、私には一言も。私から彼に言ったんです。ジュストだって、驚いている様子でした。けれど、どうして私がそれを知っているかは、絶対に言いません」

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