婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
 ……うっ……嘘でしょう! 私と結婚するって言っていたはずなのに、こんなにあっさり出て行って、どうするつもりなの!?

「ミシェルお姉様! お帰りなさい!」

 呆然として彼の乗った馬車を見送っていた私の背中に、抱きついた柔らかい感触。

「ああ。オレリー……心配させてしまって、ごめんなさい」

 向き直った私の目に映るのは、まるで妖精のような美しく儚い容姿を持つ妹オレリーだった。今流行のふわふわとした質感のドレスを纏っている事も相まって、今にも消えてしまいそうなくらいに美しい。

「お姉様、家出をしたって本当なの? 何があったの……どうして?」

 それは私の婚約者が、貴女に恋をしてしまったから……なんて、何の罪もないオレリーにここで言えるはずもない。

「っ……なんだか、何もかも嫌になっただけなの。けれど、こうして戻って来たから大丈夫よ。オレリー。貴女、身体は大丈夫なの?」

 私が心配して聞けば、オレリーは微笑んで首を横に振った。

「ええ。お姉様。あの特効薬を飲み出して、嘘のように身体が楽なのよ。呼吸もしやすくなって、動いても身体のどこも痛まないの。ほら」

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