婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
 姉の私は頭では理解しつつも、割り切れない複雑な気持ちを抱えていた。

 オレリーだって、この前に初めて挨拶することの出来たラザール様のことは、好ましく思って居るようだった。

 『本当に格好良くて素敵なお義兄様で、お姉様の結婚式が楽しみですわ』と、頬を染めてそう言っていたもの。

 いえいえ。これでは……なんだか、姉の私がまるで、相思相愛の二人の邪魔者みたいよね。

 私という邪魔者さえ居なければ、彼ら二人はすぐに結ばれるだろう。そうして、幸せに過ごすの。

 それをわかりつつラザール様と結婚して生きていくなんて、私はあまりにも辛過ぎない?

 だから、悩みに悩んだ末に、私は家を出ることにした。『この人と結婚したかった』と思っている二人に挟まれて生涯過ごすなんて、絶対に嫌だったから。



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