婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
 オレリーは自分が原因で私が家出をしたと知れば、せっかく良い薬で段々と体調が良くなっていると言うのに、心が傷つき倒れてしまうかも知れない。

「貴女はジュストのことが、幼い頃から好きだったものね……」

 しみじみとそう言ったお母様に、私は驚いた。

「お母様! 私がジュストを好きなこと……知っていたのですか?」

 私がジュストのことを好きだと、彼は目を見ればわかると言っていた。けれど、周囲の人にもそれが、言わずとも漏れてしまってわかるくらいだったのかと驚いてしまった。

「ええ。それは知っていたけれど、貴女はラザール様と婚約することが決まっていたし……幼い頃に身近な異性へ向ける一時的な感情だと思っていたもの。けど、その後もずっと傍にいたジュストは身分の問題を解決してから、貴女に好意を打ち明けたのね。何だか、あの彼の愛は、とても深くて重そうで沼のようだわ。ミシェル」

 お母様は心配顔をして、頬に右手を置いた。

「……けれど、お母様……ジュストはお父様に反対されて、何も言い返さずに荷物を纏めて出て行ったんです。どう思います? 私は彼の行き先も、何もわからないんですよ!」

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