婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
 お母様はお父様と十何年も経った今でも語り継がれるくらいの大恋愛結婚をしたし、私だって二人を身近で見ていて愛し合う夫婦は素晴らしいと思っていた。

 自分だって、そんな人と結婚したいと。

「ラザール様が健康になったオレリーを好きになったのは、ただの偶然ですけど……」

「ねえ。ミシェル……世の中には、偶然に起こることなんて、実は少ないのよ……ジュストのお父様がどんな功績を認められて叙爵されたのか、調べてみれば良いと思うわ」

 お母様の意味ありげな微笑みを見て、私はその時にもしかしたらと思った。


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