婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
「怪我もなく、特に何もなかったようで、本当に良かったよ……君を見つけて連れ帰ったという、あのいつもの護衛騎士はどうした? 礼を云おうと思っていたんだが」

 ジュストの情報を知っているラザール様が、父から何を何処まで聞いているかわからず、彼に対しやましいことがある私はドキッとしてしまった。

 ジュストとのことを考えても、婚約者である彼には早々に婚約解消を申し出なければいけないけど……ジュストと父と打ち合わせをするべきだし、何も話せていない。

 そんな中で私から、彼にここで下手なことは言えなかった。それに、ジュストが居ればこんなに近付いて来る前に、知らせてくれたはずだったと気が付く。

 もう! ……どうして、文句も言わずに、居なくなってしまったのよ! ジュスト酷い。

「えっと……今日はその護衛騎士の彼は、休みでして……ここには居ません」

 とても苦しい言い訳だ。嘘がつけない私の顔をまじまじと見て、ラザール様は不敵に笑い目を細めた。

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