婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
 この前は手紙を出そうとしただけなのに、宛先を何度も確認された。あれだと、隠れてジュストと連絡を取ろうとしても彼らに受取人まで確認されてしまうだろう。

 けれど、そんなことをしなくても、私にはジュストが何処に居るかすらもわからないというのに。

 これではこの先、ジュストとどうすると相談することだって出来ない。ジュストのことだから考えがあるに違いないとは思いつつ、逆に何も考えてなかったのでは? とまで思えて来てしまう……大きく溜め息をついてしまった時、扉が勢いよく開く音が聞こえた。

「……お姉様!」

「どうしたの? オレリー。驚いたわ」

 オレリーはいつも大人しく、姉の私の前でも礼儀正しい。彼女のこんな無作法な振る舞いは珍しく、とても驚いてしまった。

「何度も言うけど……元護衛騎士で……まあ、貴族の身分を得たとは言え、ジュストと恋人になったばかりか、彼と結婚したいなんて、絶対に駄目よ! あいつ、本当に性格悪いのよ!」

 オレリーは私がラザール様と婚約解消してジュストと結婚したいと言っていると知って、絶対に阻止したいと考えているようだ。

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