婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
「ねえ。オレリー。私のことをいくら悪く言っても良いけど、私の好きな人のことを悪く言うのは止めてちょうだい。貴女だって、誰か好きな人が出来れば私の気持ちをわかってくれると思うわ」

 オレリーは健康になって、これから楽しい貴族令嬢生活を開始するはずだ。社交界デビューだってちょうど良い年齢なのだし、もしこの子が夜会に出れば、貴族令息たちが列を成すはずよ。

 ……ひと目で恋に落ちたラザール様のことは置いておいたとしても、本当に私の妹は可愛いんだから。

「まあ! お姉さま。私のことを、いつまでも病弱で寝たきりだなんて思わないで。私にだって、すでに好きな人くらい居るもの」

 私は妹が胸を張り言った『好きな人が居る』という言葉を聞いて、あまりに驚き過ぎて、唖然として声が出なくなってしまった。

 え。どういうこと? ……オレリーに、好きな人が居るですって?

「……なんですって? それは、一体、誰のことなの?」

 妹オレリーに好きな人が居るとなれば、色々と話は変わって来てしまう。そもそもの話、祖母同士の大昔にした約束なんて、それほど拘束力のあるものでもないと思うけれど……それにしたって。
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