婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
 ザカリーだって、これが仕えているラザール様にバレてしまったら、安定した身分を失い職も失うことになってしまう。彼はそれほどのかなり危ない橋を、敢えて渡ったのだ。

 けれど、おそらくジュストはそれ以上の価値がある報酬を彼に支払い、二人の中で話はついているのだろう。

 これまでにジュストとザカリーは特に仲の良い様子は見えなかったけれど、私とラザール様は恒例のお茶会で良く会っていたので、そこで話すようになったのかもしれない。

「……けど、嬉しいわ。ようやく、会えるのね……」

 ジュストに会えると思うと嬉しくって喜びのあまり、飛び跳ねてしまいそうだった。思い余って手紙にキスをして、それを胸まで下ろしたら、そこに居た人物を見て、私は目を見開いた。

「オレリー……? 貴女、何をしているの?」

 私は慌てて、手紙を後ろ手に隠した。そして、『しまった』とは思った。これって、自分にやましいことがありますよって発表してしまっていることにならない?

 オレリーはそんな私を見て、冷静に言った。

「お姉様。駄目よ。その手紙は……ジュストに、会うつもりでしょう」

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