婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
「だって、ジュストが会いに来てくれるのが、遅かったわ」

 ジュストに会えたことは、確かに嬉しい。嬉しいけれど、不満があるとするならば、これしかない。だって、彼はそれまでは、毎日傍に居てくれたというのに。

「……申し訳ありません。かのお方が出席されるのが、直近で明日でしたので。ギリギリまで、粘りました。素直なお嬢様が、何かの拍子に口にしてしまう可能性もありますし……僕にとっては、一世一代の勝負ですので、ここで失敗したくなかったんです」

「かのお方って……誰のことなの?」

 ジュストが私のことをどれだけ失言する女だと思っているのか気になったけどここは置いておいて、彼の言う『かのお方』の方が気になった。

「ええ。そうです。さ迷える僕らをお助けしてくれるだろう、唯一のお方です」

「……それも、直前まで私に教えてくれない訳?」

 私はこの状況に不満はいっぱいあれど、ジュストのすることに間違いはないだろうという安心感もある。

 ジュストがそう言うのなら、そうなのだろう。

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