婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
 ジュストがここに来るまでにかけた労力は、本当に凄まじいものがあった。私だって、彼と同じことが出来るか? と問われたら正直自信がない。

 そもそも……それが出来るとはとても思わずに、そうそうに諦めてしまっていたかもしれない。

「お嬢様の元へ……戻ります。どんな身分に落ちても、大逆転の可能性はいくらでもありますので。僕にはそれが出来る力が備わっていると思います」

「そうまでして……どうして、私のことを、諦めないの?」

 私は素直に不思議に思ってそれを聞いたんだけど、ジュストはどこか苦しそうな表情を浮かべて言った。

「お嬢様を簡単に諦められたのなら、これまでもこれからも楽に生きられたと思います。けど、どうしても僕は諦められなかった。結ばれるかもしれないわずかな可能性があると思うと、眠くても疲れていても勝手に身体が動いていた……それほどまでに好きになれる存在に出会えて、なんだか不思議に思えます。もうすぐ、その夢が叶いますし」

「ジュスト……あの、怖い」

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