婚約破棄したいのに、天才華道家の独占愛に火を付けてしまったようです。
お弁当は某高級和食店のものだった。この展示会開催を祝して差し入れされたものらしい。
宝石箱のように具だくさんのお弁当は、とても美味しかった。
今更ながら、本来から紅真や蘭はこういった高級なものを食べ慣れているのだなと思った。
菜花の実家も高級志向で専属のシェフが毎食豪華な食事を作ってくれるが、菜花はどちらかと言えば庶民的な家庭料理が好きだった。
子どもの頃はどちらかと言えば憧れていた程である。
(でも紅真くんは本当はこういう高級なものの方が好きなのかもしれないな……)
もしかして無理して食べてくれていたのかもしれないと思うと、落ち込んでしまう。
お弁当を食べ終え、紅真を探しながら展示物を見て回ることにした。
実はまだゆっくり見られてはいないので、じっくり見たいと思った。
「流石、どれも綺麗だなぁ」
会場内は色とりどりの花々が彩り、明るく優美な雰囲気に包み込まれている。
そこかしこから薫る花の香りが更に楽しませてくれる。
ふと目に留まったのは、真っ赤なヒガンバナを大胆に使用した作品だった。
一際目立ち、存在感を放つ豪華絢爛さは見る者を魅了する。
作品の作者名は「珠沙華枝」とあった。
(これって、あの人の……?)
「いかがでしょうか? 私のヒガンバナ」