婚約破棄したいのに、天才華道家の独占愛に火を付けてしまったようです。


「だから一緒に行くよ。私も紅真くんの傍にいたいから」
「菜花……」


 紅真はぎゅうっと菜花を抱きしめる。


「ありがとう、僕の我儘を聞いてくれて」
「我儘なんかじゃないよ、私がそうしたいの」


 もちろん今の仕事も大好きだし、これからも頑張っていきたい気持ちもある。
 だけどそれ以上に隣で紅真を支えたい。一番近くにいたいという気持ちが強かった。


「今からフランス語と英語の勉強しなきゃ」
「英語なら教えようか?」
「紅真くん英語話せるの!?」
「少しだけ」


 やっぱりすごいなぁと思いつつ、元々海外進出を見据えていたのかもしれないなぁと思った。
 自分ももっと頑張ろうと思った。


「僕が頑張れるのは菜花のおかげなんだよ」
「私?」
「菜花がいつも一生懸命努力する姿を見てきたから、僕も頑張ろうって思えるんだ」
「それは、私も同じだよ」


 どんな些細なことでも妥協せず、今もずっと前を見据えて努力し続ける紅真だから大好きで尊敬している。
 紅真の隣にいて恥ずかしくない自分でありたいと思う。


「紅真くんに私を選んで良かったって思ってもらいたいから」
「もうずっと思ってるよ」


 紅真はちゅっと菜花の頬にキスを落とす。


「僕の方こそ、選んでくれてありがとう」


 菜花は花のような笑顔で紅真を見つめ返し、ぎゅうっと自分から抱きしめた。

 黄色いバラと赤い千日紅が向かい合い、頷き合っているように見えた。
 これからも離れない、二人の愛は永遠だと言っているようだった。
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