婚約破棄したいのに、天才華道家の独占愛に火を付けてしまったようです。
エピローグ
「菜花〜! こっち向いて!」
「雛乃、照れるよ」
「何言ってるの? こんなに綺麗なのに」
雛乃は一眼レフカメラのシャッターを何度も切る。
菜花はカメラを向けられて恥ずかしそうに頬を染めながら、椅子に座っていた。
「本当に素敵なドレスだね」
「ありがとう、私もすごく気に入ってるの」
「それに髪飾りも! 本物のバラなんておしゃれすぎ」
そう言って雛乃は菜花の髪型をアップで撮る。
菜花の頭には本物の白いバラで作られた髪飾りがある。ローズ柄のレースのドレスに合わせ、紅真が作ってくれたものだ。
ベールも今日のためだけに作られたオーダーメイドである。
「髪飾りまで作れちゃうなんて、すごいね紅真さん」
「紅真くんは何でもできちゃうから」
「自慢の旦那様だね」
「うんっ!」
菜花の手に持っているブーケも紅真が作ってくれたものだ。
ドレスに合わせた白いバラと黄色いバラ、プルメリア、白いバーベナ、そして黄色い菜の花。
白と黄色のブーケという正に菜花のためのブーケだ。
本当にかわいくてブーケトスが惜しまれるくらいである。
「なんか本当に感慨深いなぁ。やっとこの日を迎えられたのか! って感じ」
「雛乃には婚約した時から色々話聞いてもらってたもんね」
「ほんと。今だから言うけど、紅真さんにバースデーデートに誘われたって聞いた時はプロポーズなんじゃないかって思ってたよ」
「えー? そうだったの?」